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LASSO回帰の復習・その1

Lasso(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator)回帰とは

Lasso回帰は、統計モデルの予測精度を向上させるための回帰分析手法の一種で、機械学習統計学の分野で広く利用されています。最初の報告は地球物理学で行われましたが、後にRobert Tibshiraniが再発見し、一般化しました。

Lasso回帰の特徴

当時、私は統計モデルの性能が思うように上がらずに悩んでいました。そんなとき、統計学会でLasso回帰の発表を聞き、驚いたのを覚えています。

Lasso回帰はL1正則化という機能を持ち、重要度が低い説明変数の係数(重み)を0にするスパース性を示します。 この重みがパラメータで、重みが0になった説明変数は統計モデルに使われなくなります。このようにパラメータ推定と変数選択が同時に進みます。

しかも、スパース性は変数を少なく抑える効果を持つので、予測モデルの過剰適合(オーバーフィッティング)を抑えることになります。そのため、多重共線性を示す説明変数間の相関が高いケースや、説明変数がサンプル数よりも多いケース、欠損値があるケースなど、今まで使いにくかったデータセットにも適用できる可能性が生まれました。

一方で、Lasso回帰も万能ではなく、パラメータのチューニングが重要、信頼区間の計算が困難という特徴もあります。

とはいえ、L1正則化は強力なので、もとは最小二乗法で定義されていたLasso回帰も、一般化線形モデル、一般化推定方程式、比例ハザードモデル、M推定器などへ拡張され、様々な分野での応用が期待されています。

  1. L1正則化: 重要度が低い説明変数の係数(重み)を0にするスパース性を示します。つまり、Lasso回帰によって推定された重みが0になる変数は、統計モデルにおいて無視されることになります。この性質により、変数の選択とパラメータ推定が同時に行われることが特徴です。

  2. スパース性と変数選択: Lasso回帰はスパースな解を示すため、重要な変数だけが残ります。したがって、Lasso回帰は変数選択の手法としても機能します。これにより、モデルの解釈性が向上し、統計モデルの性能が改善されます。

  3. 過剰適合の抑制: Lasso回帰のスパース性は、変数の数を制限する効果を持ちます。そのため、Lasso回帰は過剰適合(オーバーフィッティング)を抑制する効果があります。特に、多重共線性の問題やサンプル数よりも多い変数のあるデータセット、欠損値のあるデータなど、従来の手法では扱いにくかったデータにも適用できます。

また、Lasso回帰はさまざまな分野で応用されています。例えば、生物学では遺伝子発現データの解析、経済学では株価予測や経済指標の関連性解析、医療では疾患予測やバイオマーカーの選択などです。

分野 応用事例
生物学 遺伝子発現データの解析
経済学 株価予測、経済指標の関連性解析
医療 疾患予測、バイオマーカーの選択
画像処理 特徴選択、物体検出、顔認識
自然言語処理 単語の重要度推定、テキスト分類
プロセス制御 化学反応のモデリング、プロセス最適化
SNS分析 コミュニティ検出、影響力推定
製造業 品質予測、不良要因の特定
環境・エネルギー 気候モデリング再生可能エネルギー予測
保険業 ポートフォリオ最適化、リスク予測
輸送・物流 需要予測、在庫最適化

Lasso回帰の実行手順

Lasso回帰の実行手順は以下の通りです。

  1. データの準備: 解析に適した形式のデータを収集し、特徴量(説明変数)と目的変数に分ける。
  2. データの前処理: 説明変数を標準化や欠損値の処理を行う。
  3. データの分割: データを訓練データとテストデータに分ける。
  4. モデルの構築: Lasso回帰モデルを定義し、正則化パラメーター$\lambda$(ラムダ)を設定する。
  5. モデルの学習: 最適化手法を用いて訓練データからL1正則化項に最適なパラメータを求め、学習済みモデルを得る。
  6. モデルの評価: 平均二乗誤差(MSE)や決定係数($R2$))、AICBICなどを指標に、学習済みモデルの性能を評価する。
  7. 特徴選択と結果解釈: モデルの係数を分析し、重要な特徴の特定や解釈を行う。