日々のつれづれ

不惑をむかえ戸惑いを隠せない男性の独り言

アンジェリーナ・ジョリーさんが与えたインパクト

アンジェリーナ・ジョリーさんがBRCA遺伝子検査の結果を受けて予防的乳房切除を行ったことが日本でも大きなインパクトを与えています

Hollywood actress Angelina Jolie has undergone a double mastectomy to reduce her chances of getting breast cancer.
The 37-year-old mother of six has explained her reasons for having the surgery in the New York Times.
She said her doctors estimated she had an 87% risk of breast cancer and a 50% risk of ovarian cancer. "I decided to be proactive and to minimise the risk as much I could," she wrote.
Her partner, Brad Pitt, praised her choice as "absolutely heroic".

Angelina Jolie has double mastectomy due to cancer gene

ニュースを見て思ったこと

彼女のアクションはいつも世の中へのメッセージを含んでいる
もしかしたら、一国の首相の声明よりも強く力を持つかもしれない
と思います

ただ、彼女のアクションは、彼女自身が深く学び、理解し、自分や周り、それよりももっと広い世界への影響を考慮した上でのアクションだと思います
ですから、今回のニュースを聞いた女性がBRCA検査に飛びつき、検査結果で一喜一憂すること、過剰反応して混乱することは、彼女が望んだ世界ではないと思います。
正しい知識を手に入れて、良いお医者さんと良く話し合って、自分にあった対応をして欲しいなと思いました。

乳がん学会からのコメント

乳がん学会は、乳がん患者の方々とより良い未来を築き上げるために、積極的に社会へ発信しています
この動きの中、乳がん学会がコメントを発信していたので、掲載したいと思いました

遺伝性乳癌に関する日本乳癌学会としてのステートメント

米国の人気女優アンジェリーナ・ジョリーさんが乳がん予防のために受けて話題となった遺伝性乳癌に関する事項、とくに乳房切除手術について多くの関心が寄せられています。今回、日本乳癌学会としてのステートメントを発表させていただきます。

「現在、遺伝性乳がん卵巣がんに関する検査及び、一連の医療行為(予防的な乳房切除術)は保険診療下で行うことはできません。しかし、保険診療ではない、自由診療というかたちでならば、同疾患に対する遺伝カウンセリングの体制が整った施設でのみ、遺伝学的検査を行うことは可能です。今後は、さらなる診療体制の充実を図るため、ただいま関連学会等と協議中です。指針が定まりましたら、改めてお知らせいたします。」

遺伝性乳癌に関する日本乳癌学会としてのステートメント

乳がんは、癌の中でも様々な治療法が確立しており、診断法も充実している癌の一つだと思います
また、ピンクリボン運動として、乳がんの啓蒙活動も盛んです
「・・・リボン運動」は様々な癌にあるのですが、ピンクリボンが広く知られていることからも分かると思います
正しい知識と良識のある先生と対話することで、個人個人に見合った治療が実現する、私はそう思います。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)

BRCA遺伝子の変異は家族性であることがあるそうです
これを、一般的には「Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome(HBOC)」といいます
キーワード検索をすれば多くの情報が得られるとおもいます

でも、難しいのはリスクの解釈だと思います
BRCA変異で一般的に言われていることは

BRCA1/2遺伝子に変異があると乳がんになるの?

BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に病的変異がある女性が、必ず乳がん卵巣がんを発症するわけではありません。しかし、これらの遺伝子のどちらかに変異がある女性では、変異がない女性と比較して次のような傾向があると海外では報告されています。
(1) 乳がん卵巣がんを若い年齢で発症するリスクが高い
(2) 乳がんを発症するリスク(生涯発症リスク)は、45-84%
(3) 卵巣がんを発症するリスク(生涯発症リスク)は、11-62%
(4) 最初の乳がんを診断されてから10年以内に、もう片方の乳房にがんを発症する割合は、予防的な対応を行わなかった場合、BRCA1遺伝子の変異で43.4%、BRCA2遺伝子の変異で34.6%
(5) 最初の乳がんを診断されてから10年以内に卵巣がんを発症する割合は、BRCA1遺伝子の変異で12.7%、BRCA2遺伝子の変異で6.8%

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の情報サイト

ということになっているようです

素人が「乳がん卵巣がんを若い年齢で発症するリスクが高い」と言われてもピンとしません
なぜなら、リスクが50%と言われても、50%の病気なんてない
個人にとっては「病気になるか、ならないか」だからです

自分が、アンジェリーナ・ジョリーさんだったとして、
乳房を取り去ることで乳がんになる可能性は低くなったと思うでしょう
でも、取り去った乳房が、本当に乳がんになる運命だったかどうかなんて分からない

検査・診断は、将来の不安を取り除くためにある
でも、それが本当に必要な診断だったのかどうか、なんて分からないよね
と思いました。

予防的乳房切除

私自身は昨年ごろから良く耳にした言葉です
乳腺外科の先生に教えていただいたときの第一印象は「欧米はドラスティックな国だな」というものでした
でも、がん研有明病院が予防的乳房切除を開始したことを知り、未来の話でないと実感したのを覚えています

がん研有明病院の新井正美先生のインタビューの抜粋(NMオンラインから)

遺伝性乳がん原因遺伝子のBRCA1/2に変異がある乳がん患者では、卵巣がんに罹患する確率が高くなる。
海外ではこのような患者に対するリスク低減両側卵巣卵管切除を行うことがあるが日本ではまだ一般的ではない。
がん研有明病院が臨床試験の一環として、リスク低減切除の導入に踏み切った。

BRCA1/2遺伝子変異のある乳がん患者のリスク低減策

  乳がんでは、MRIによるサーベイランスが早期発見に有用であるとする報告がある
  がん研有明病院では乳腺科は半年に一回、婦人科は3か月に一回の頻度でがん検診を行っている

  • 化学予防

  エストロゲン受容体拮抗薬であるタモキシフェンは、HBOCの対側乳がんのリスクを50%下げるとされている
  ただし、予防効果は50%程度、予防的内服では保険の適用にはならない

  • 低減両側卵巣卵管切除術

  海外では、この手術で、卵巣がんで80%、乳がんで発症リスクを50%低下させると報告されている
  乳がんを発症していればその再発リスクも減少する

米国ではHBOCの遺伝カウンセリングの際にこの予防的手術の説明は必ず行われる。
ただ、欧米でも遺伝カウンセリングを受けた多くの患者さんがこの手術を受けているわけではない。
健康な臓器を切除するということへのためらいは誰にでもある

MDアンダーソンがんセンターのデータ
  • 遺伝カウンセリングから遺伝子検査へ進む人は59%
  • 変異保有者の半数がサーベイランスを選択
  • 実際にリスク低減卵巣卵管切除術を受ける人は変異陽性者の4分の1
現状の課題
  • 日本人の、HBOCやリスク低減両側卵巣卵管切除術のデータがほとんどない
  • 海外でも、低減乳房切除術後はがん発症のリスクは低減できるが、生存期間に繁栄されるか分からない
  • BRCA1/2遺伝子に変異があっても100%ががんに罹患するわけではなく、結果的には発症しないケースもある
がん研有明病院がHBOCの“予防的切除”を開始した理由

「罹患しやすさ」に関する遺伝子の研究が盛んになっています
ゲノム情報を適切に扱う医療者の介入が重要になります
医者、看護師、遺伝カウンセラー、薬剤師など医療従事者全員が一体となることが大切になります
そして、私達、患者もきちんと対話し、正しい治療を選択することが大切になるのだと思いました