日々のつれづれ

不惑をむかえ戸惑いを隠せない男性の独り言

バイオマーカーが拓く新しい医療

乳がんは手術、薬物療法放射線療法、たくさんの治療選択肢がある
エコー、CT、MRIマンモグラフィー、たくさんの診断法がある

日本では定期検診も盛んで、早期発見ができる環境にある
だから、予後の良い方もたくさんいらっしゃる
早期発見ができること、それが生存率に反映する
乳がんはそれが実現可能な癌なんだと思う
http://www.tbs.co.jp/pink-ribbon/img/data/data_graph_04.gif
(TBSリボンプロジェクトから)

で、乳がん学会があった
今年も未来を感じさせる発表がたくさんあった
その中で、興味深い発表があった

乳癌の早期発見と手術

原発乳がんは早期発見できれば、手術する領域を狭くして、乳房を温存できる可能性が高まります
昔のように、乳房を全部切除して、まわりのリンパ節も郭清して、ということを回避できます

胸筋温存乳房切除術

http://www.softnine.co.jp/k_breast_web/sick/images/02-05-0201.gif
乳頭およびしこりの直上の皮膚を含めて乳腺を全部切除しますが、大胸筋や小胸筋は残す手術法です。必要に応じてセンチネルリンパ節生検、あるいは腋窩リンパ節郭清を行います。

乳腺全摘術

http://www.softnine.co.jp/k_breast_web/sick/images/02-05-0203.gif
腫瘍を含んだ乳腺全部を取り除きます。乳頭、乳輪は残ります。胸筋温存乳房切除術と違って、乳房の外縁から下縁に沿って、皮膚を切開して、乳腺だけを取り除く方法です。
(慶応大学医学部から)

でも、一方で乳房を残すということは、もし、乳癌細胞の取り残しが合った場合、そこから再発するリスクを負うということです
そのため、乳癌の術後は化学療法などを組み合わせて、再発を防止します
そして、定期的に検査して、仮に再発をしてしまっても早期に発見できるようにします

バイオマーカーの重要性

そのとき、大切になるのがバイオマーカーです
手術した時に乳がん細胞を調べると、早く再発するタイプの癌か、そうじゃないか、を見分けられると考えられています
また、再発癌が見つかったとき、その癌を調べると、早く進行するか、そうでないか、どんな治療法が効果があるのか、などが分かると考えられています

 乳房再発巣における癌幹細胞マーカーALDH1の発現は、HER2やki-67と組み合わせることで予後を予測できる可能性が示唆された。
 また、原発巣と乳房内再発巣の両方でALDH1を発現していると最も予後が不良で、真の再発を多く含む可能性が高いと考えられた。
 6月27日から浜松で開催された第21回日本乳癌学会総会で、日本乳癌学会石飛班を代表して岡山大学病院の枝園忠彦氏が発表した。
(中略)
 癌幹細胞は、自己複製機能と分化能の両方をもつ細胞であり、予後因子として、また治療標的として注目されている。
 幹細胞マーカーの1つであるALDH1(Aldehyde dehydrogenase 1)の乳癌原発巣および腋窩リンパ節転移における発現が予後と相関すること、およびALDH1陽性細胞では薬物療法に耐性があることはすでに報告されているが、同側乳房内再発巣(IBTR)におけるALDH1を調べた研究はまだない。
(中略)
 以上のことから枝園氏は、「乳房内再発巣におけるALDH1発現は強力な予後因子ではないが、HER2やki-67と組み合わせることで予後予測因子となりうる可能性がある。
 原発巣と乳房内再発巣の両方でALDH1陽性である症例は最も予後が悪かった。これらは術後の治療を生き残った真の再発を多く含む可能性が高い」としながら、「今後は、ALDH1陽性細胞がどこに潜んでいたのか、また、ALDH1陽性細胞をターゲットとした治療の開発が可能か、という点を検討する必要がある」と結んだ。

乳房内再発巣における幹細胞マーカーALDH1はHER2やKi-67と組み合わせることで予後予測に有用な可能性

幹細胞マーカーALDH1

ALDH1は近年、注目を集めているバイオマーカーです

 米Johns Hopkins大学のWilliam Matsui氏らは、早期の膵臓腺癌患者から摘出された腫瘍におけるアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の発現と患者の生存期間の関係を調べた。
 得られた結果は、ALDH陰性だった患者に比べ、陽性の患者の生存期間は有意に短いことを示した。
 詳細は、米国立癌研究所(NCI)ジャーナル電子版に2010年2月17日に報告された。
(中略)
 ALDH陽性細胞の遺伝子発現は間葉系細胞の特徴を示し,in vitroにおける遊走と浸潤の能力は膵臓腺癌細胞全体の約3倍と高かった。
 得られた結果は、膵臓腺癌中に存在するALDH陽性細胞は、癌幹細胞の特徴を示すこと、この細胞が転移を促進し、全生存期間の短縮をもたらしている可能性があることを示唆した。

ALDH陽性の癌細胞を有する膵臓腺癌患者は生存期間が短い

研究用途ですが、ベリタスから測定キットも発売されています

新しいバイオマーカーが実用化されれば、新しい医療が生まれる
新しい医療が生まれれば、新しいバイオマーカーが見つかる

正の循環が生まれると嬉しいです