日々のつれづれ

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KRAS変異と大腸がん

分子標的薬のセツキシマブとパニツムマブはKRAS遺伝子に変異があると薬効が変わることが知られている
そのため、セツキシマブとパニツムマブの投薬前にはKRASの変異について検査することが必要とされている

セツキシマブ(アービタックス)

大腸がんを対象としたモノクロナール抗体
摘要は『治癒切除が不可能が進行・再発の大腸がん』

がん細胞表面のEGF受容体は、がん細胞の異常増殖を誘導する
セツキシマブはこの受容体と結合して、細胞の増殖を阻害する

添付文書には次の記載があります

効能/効果
1.EGFR陽性の治癒切除不能な進行結腸癌・治癒切除不能な再発結腸癌・治癒切除不能な進行直腸癌・治癒切除不能な再発直腸癌。
2.頭頚部癌。
<効能・効果に関連する使用上の注意>
1.術後補助化学療法としての本剤の有効性及び安全性は確立していない。
2.EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対する本剤の使用に際してはKRAS遺伝子変異の有無を考慮した上で、適応患者の選択を行う。
3.添付文書の「臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行う。

アービタックス注射液100mg

パニツムマブ(ベクティビックス)

大腸がんを標的としたモノクロナール抗体
摘要は『KRAS遺伝子野生型の治癒切除が不可能な進行・再発の大腸がん』

がん細胞表面のEGF受容体は、がん細胞の異常増殖を誘導する
パニツムマブはこの受容体と結合して、細胞の増殖を阻害する


添付文書には次の記載があります

効能/効果
KRAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行結腸癌・KRAS遺伝子野生型の治癒切除不能な再発結腸癌・KRAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行直腸癌・KRAS遺伝子野生型の治癒切除不能な再発直腸癌。
<効能・効果に関連する使用上の注意>
1.術後補助化学療法として本剤を使用した場合の有効性及び安全性は確立していない。
2.KRAS遺伝子変異を示す患者での有効性は確立していない。
3.添付文書の【臨床成績】の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行う。

ベクティビックス点滴静注100mg

KRAS変異

セツキシマブとパニツムマブは共にKRAS遺伝子に変異があるとEGF受容体を阻害しても、がん細胞の増殖刺激が入りつづけて、薬効が弱まるからです
この遺伝子変異と薬効の関係は、2009年のAACRでは大きな話題となりました

BRAF遺伝子、PIK3CA遺伝子、KRAS遺伝子の3つの遺伝子に変異があることと、PTEN遺伝子の発現が損失することが、転移性大腸癌に対する抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体の効果を損なわせる可能性が明らかとなった。
転移性大腸癌患者でセツキシマブまたはパニツムマブの抗EGFR抗体の治療を受けた患者132人の検体をレトロスペクティブに解析した結果、明らかとなったもの。成果は、4月18日から22日に米デンバーで開催されている米国癌研究会議(AACR)で、イタリアUniversity of Turin School of MedicineのFederica Di Nicolantonio氏によって発表された。

大腸癌で抗EGFR抗体が効かない患者をKRAS、BRAF、PIK3CA、PTENの遺伝子変化で70%判定できる可能性

そして、2010年に厚生労働省臨床試験の結果を受け、投与規程を儲けました

厚生労働省医薬食品局安全対策課は、3月23日付に発出した通知で、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に用いる抗がん剤アービタックス(一般名:セツキシマブ遺伝子組換え)の添付文書に、KRAS遺伝子の変異の有無考慮して投与することを追記するよう指導した。
同剤は、KRAS遺伝子に変異のない(野生型)患者に効果が高いことが臨床試験で明らかになってきている。KRAS遺伝子変異検査が4月には保険適用となる予定であり、診断薬は承認審査中という状況から判断したもの。
(中略)
KRAS遺伝子と薬剤投与の関係では、3月23日に薬食審・薬事分科会で承認が了承された、武田薬品抗がん剤ベクティビックス点滴静注100mg(パニツムマブ遺伝子組換え)の効能・効果に「KRAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」と、効果の高い患者を選び投与することが明記された。

アービタックス:KRAS遺伝子の変異の有無考慮して投与を:厚労省指導

現在は、ガイドラインでも検査することが必要とされています

CQ 16 KRAS遺伝子変異と抗EGFR抗体薬
推奨カテゴリー A
抗EGFR抗体薬はKRAS遺伝子に変異がない大腸癌において有用性が報告されている。
癌組織のKRAS遺伝子変異と抗EGFR抗体薬の有効性との間に密接な相関があることが報告され、KRAS遺伝子変異例には、抗EGFR抗体薬の投与は推奨されない。

サイドメモ
■抗EGFR抗体薬とEGFR免疫染色
cetuximabに関する臨床研究のほとんどがEGFR陽性例を対象として検討されており,保険適応もEGFR陽性例に限定されている。
一方,panitumumabに関する臨床研究のほとんどもEGFR陽性例を対象として検討されており,EGFR陰性例に関するエビデンスは限られているが,保険適応はEGFR陽性例に限定されていない。
最近では抗EGFR抗体薬の効果と免疫染色におけるEGFR発現レベルとの関連性はないとする報告がある。

大腸がん治療ガイドライン

大腸癌治療ガイドライン 医師用〈2010年版〉

大腸癌治療ガイドライン 医師用〈2010年版〉