KRAS変異と大腸がん・その2
セツキシマブ、パニツムマブの投与にはKRASの遺伝子変異検出が必須になっている
そのため、遺伝子検査のビジネスが生まれている
先日のアンジーとBRCAのニュースは有名な話ですが、遺伝子変異検査のビジネスは、今大きく注目されている
それは、一般的に分子標的薬は非常に効果で、KRASに変異のある大腸がん患者へセツキシマブ、パニツムマブを投与することは、無駄な上に効果な治療をしているという点で、人道的に問題があるからと言える
診断薬市場
これまで、診断薬市場は早期発見や治療後のモニタリングといった用途がほとんどで、患者さまの生死と直接関係しない用途に限定されていた
そのため、生死に関わる薬に比べて、単価が安く、市場は小さかった
一般社団法人日本臨床検査薬協会から
臨床検査薬等の売上金額
(1)分野別売上金額推移(1996〜2011)〈単位:百万円〉
年度 | 体外診断薬 | 一般用検査薬 | 検査用試薬 | 検査用機器・リース | 合 計 | 体外診断薬輸出 |
1996 | 258,869 | 3,247 | 41,636 | 94,593 | 398,345 | 26,817 |
1997 | 255,773 | 4,173 | 41,809 | 85,717 | 387,472 | 30,609 |
1998 | 246,185 | 3,555 | 46,802 | 88,821 | 385,363 | 46,552 |
1999 | 249,908 | 2,914 | 48,115 | 88,524 | 389,461 | 52,280 |
2000 | 266,560 | 2,612 | 39,026 | 88,913 | 397,111 | 58,593 |
2001 | 280,082 | 2,220 | 41,640 | 91,732 | 415,674 | 65,066 |
2002 | 284,379 | 2,224 | 48,848 | 73,020 | 408,471 | 52,876 |
2003 | 288,579 | 2,475 | 54,233 | 75,259 | 420,546 | 43,173 |
2004 | 281,842 | 2,044 | 61,618 | 80,126 | 425,630 | 44,165 |
2005 | 286,415 | 2,323 | 63,281 | 98,248 | 450,267 | 50,892 |
2006 | 293,517 | 1,830 | 51,460 | 102,280 | 449,087 | 58,264 |
2007 | 297,220 | 2,006 | 63,329 | 110,504 | 473,059 | 72,739 |
2008 | 294,745 | 1,669 | 56,584 | 97,008 | 450,006 | 48,301 |
2009 | 310,709 | 1,708 | 54,131 | 89,728 | 456,276 | 52,372 |
2010 | 311,955 | 2,137 | 59,522 | 98,068 | 471,682 | 57,965 |
2011 | 321,216 | 1,822 | 70,311 | 104,871 | 498,220 | 59,684 |
しかし、『分子標的薬に対する治療法選択』という診断マーケットは、効果な薬の選択と薬効の最大化という役目がある
患者様に不要な治療をすることを回避できるという役目をもった
そのため、このコンパニオン診断というマーケットはどんどん大きくなるといわれている
(equitystoryのプレしジョン・システム・サイエンスの紹介から)
KRAS変異検出
KRAS変異を検出する検査薬が次々と承認されている
これはセツキシマブ、パニツムマブという大きな市場に大して診断薬を投入できた企業が勝ち組になれるから
MEBGEN KRAS 遺伝子変異検出キット
国内で承認を得ている検査キット
GS GType TET2/CBL/KRAS Primer Set
国内承認を得ていない研究用キット
- 直ぐに使える: GS Junior と GS FLX システムのどちらでも直ぐに使用できるよう最適化
- 正確な検出: 新規、既知の SNVs、挿入、欠失の正確な検出が可能
- 高感度: ディープシークエンシングにより、高感度で変異を検出
- 高精度なハプロタイピング: ロングリードにより精度の高いハプロタイピングが実現
- シンプルな解析: 市販のソフトウェアで簡単に解析
- 実績: ドイツのミュンヘン白血病研究所( MLL )との共同開発製品
という特徴
PCRベースのキットは31種類の遺伝子を検出する
ただ、2010年の記事では承認をとると宣言しているが、未だに取れていないことを思うと、方針を変更したのかもしれない
ロシュ・ダイアグノスティックスは、現在申請中の大腸がんのK-RAS遺伝子変異を検出する診断薬「TheraScreen K-RAS mutation kit」を、4月の保険収載を前提に発売準備中であることを明らかにした。
日刊薬業:戦略品「K-RASキット」を4月にも発売へ
2010年度に発売予定の16製品の中でも戦略新製品の1つに位置付け、同社が掲げる個別化医療の推進を加速化させる方針だ。
同社の小川渉社長兼CEOが4日の会見で発表した。
遺伝子診断は一般的に効果になりがち
体外診断薬は薬価が高くつかないので、戦略が難しいのだろう
凸版印刷株式会社と株式会社理研ジェネシス
一番最近のニュース(2013.6.12)
両者の研究成果が実を結びつつある
凸版印刷株式会社と株式会社理研ジェネシスは、新たにKRAS遺伝子の体細胞変異を迅速、簡便に検出できる遺伝子解析システムを開発しました。
大腸がんの最適抗がん剤選択に向け、KRAS遺伝子変異解析システムを開発
理研ジェネシスは、このKRAS遺伝子変異解析システムを研究用途向けに2013年度中に販売を開始していきます。
また欧州における体外診断薬販売に向けて98/79/EC指令をクリアーし(CEマークを貼付)、欧州でも販売する予定です。
特徴は4つ
- コドン12,13に出現する7種類の変異を検出
- 10%以上の検出感度
- 早い検査時間
- 簡便かつ安定な検査システム
さて、結構大型の装置ですが、日本の狭くて多くの検査装置が立ち並ぶ、臨床検査室に入り込むことができるのか?
それとも、検査機関を設けて、受託検査ビジネスとするのか?
いずれにしても、楽しみです